99.99%が未知の世界で
サステナビリティのヒントにあふれた日本で

鹿児島・坂元醸造を訪ねて

99.99%が
未知の世界で

発酵がつなぐ、人々の命

日本の食文化は発酵とともにありました。人類が微生物や酵素の存在を知るずっと前から、見えない自然の力に気づき、発酵食品を作ってきたのです。お酢や醤油、味噌に日本酒。長期保存が可能になり、栄養価が高まるなど、限られた資源を活かす微生物の働きが、長い歴史の中で選ばれ、受け継がれてきたのです。
そして天野エンザイムの酵素の仕事は、人々が自然を敬いながら共生してきた、サステナブルな営みの流れにあるものです。土壌から微生物を採取し、科学の力で解明した酵素の力で、時間が経ってもお米やパンのやわらかい食感を維持するなど、食料を廃棄から守る働きを提供しているのはその代表例です。最近では、廃棄物のリサイクルやアップサイクルへの貢献、微生物・酵素を活用するスタートアップへの出資や共同開発なども行なっています。そして酵素は、常温・常圧で化学反応を起こせるため、高温・高圧にして起こす化学反応よりも、環境への負荷がずっと低いのです。

日本には坂元醸造というお酢をつくっている会社があります。ここでは、江戸時代からの伝統製法を受け継ぎながら、九州の鹿児島、福山町という風土でしか生まれないユニークな“黒酢”をつくっています。唯一無二の自然と人の力が体感できるため、天野エンザイムでは毎年、社員が学びに行かせてもらっています。
坂元醸造では、陶器の壺に米と麹と地下水を入れ、壺畑と呼ばれる場所で太陽の下にさらし、まるで農作物のようにお酢を作っています。そして修行を積んだ醸造技師が五感を働かせて毎日発酵と向き合うことで、数年経つと黒酢と呼ばれる独特のお酢が出来上がります。時間もコストもかかりますが長い目で見るとこの伝統製法が一番結果がよいそうで、深い味わいだけではなく健康効果が評判になり、日本全国にその名が広がりました。

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自然こそ、イノベーションの宝庫

この黒酢の効果を解明するためにいろいろな大学が研究していますが、体に良い機能があることが証明されても、なぜそう作用するのかはまだ多くの謎が残されています。そもそも酵素をうみだす微生物にしても、人類はまだこの世界の0.01%しか知らないと言われています。99.99%は未知の世界なのです。昔はその数字が0.1%と言われていましたが、DNA解析などの分析技術が進歩したことで、むしろ人間にわかっていないことがもっとたくさんあることが、わかったのです。

だからこそ、その先には人類の想像を超えた働きをする酵素の発見があるはず。天野エンザイムでは最先端のバイオ技術、例えばタンパク質工学による酵素の改変だけでなく、スクリーニングという伝統の手法を受け継ぎ、多種多様な環境からサンプルを集め、膨大な菌のライブラリーを所有しています。世界中からの課題解決の依頼に、自然界にある酵素の未知の働きを見つけることで応えるためです。実際、私たちの主力商品になっているある酵素は、社員の家の近くで採った小川の土から見つかりました。たったスプーン一杯の土から、世界に役立つ発見ができるわけです。私たちが認知できることは自然の働きのほんの一部なのだという自覚こそが、革新的な発見につながると信じています。

〈取材協力〉坂元醸造